夏空、蝶々結び。
家に帰ると、当然誰もいなかった。
そう、当たり前。
もっとよく探せば、私のように少しでも霊感があるという人が――私よりもずっと可愛い子が見つかるはず。
ゴンの言う通り、それが彼の希望だったし。
多分、私にとっても。
とり憑かれて、こんなにすぐダメージを受けていては身がもたない。
たとえそれが、心霊的な原因とは言えないとしても。
(でも……)
あの場所で、散々待ったんだったっけ。
今度は上手くいくかな。
会社に行くことができたんだから、今は自由に動けるのかも。
もしかしたら、会社の中には他に該当者がいたりして。
(その方がいいんだよね。お互い、きっと)
ルールを制定したばかりで、こんなことになるなんて。
名前も知らない、ふわふわ軽そうで適当な発言も多いゴン。
そんな彼が、あの場を動けなくなるほど執着するものって何なのだろう。
名前すら教えてくれないのに成仏する手伝いをしろだなんて、無茶もいいところだけれど。
それでも、まだ何もできていなかった。
もしもこの先、少しでも仲良くなれていたなら。
それも変わっていたんだろうか。
もしかしたら、今はまだ知り合ったばかりなだけで。
小さな子供ならともかく、すっかり大人になってしまった私たちが突然同居なんて。
もめないはずはないけれど――だからこそ時間が経てば。
もうちょっとだけ、上手くやれたのかな。