夏空、蝶々結び。

ゴンのことを好きか嫌いかと問われれば、苦手だし――嫌いだ。
声を掛けられた時の軽い調子は好きじゃないし、開き直ってからの横柄な態度だって。
放っておいてほしい傷口を、平気で広げるような言葉も。
何より、隠しているはずのその傷を、すぐに見つけられてしまうのも。

なのに――……。


「……帰ってきたら困るし」


自分でもよく分からなかった。
同居生活はけして楽しいものじゃなければ、ましてや甘さや色っぽさは皆無。
身に覚えのあるゲーム設定とは、もちろん程遠い。
イライラするし、疲れている。
そんな時いつもならベッドに横になるのに、私は今、言い訳しながら洗濯なんかしちゃっているのだ。

もう来ないかもしれないのに。
来ないなら、来ないでいてくれると助かるのに。
今、彼が戻ってくることの心配をしている。
そしてなお意味不明なことに、可愛い下着が視界に入り無性に泣きたくなった。


「最悪……」


一体、何なの。

散々諦めたがっているくせに、こっそり抵抗を試みる自分が恥ずかしい。
どうせ頑張るのなら、相手を探す努力をすればいい。

なのに私は可愛い女になるのが苦手で、可愛い女を演じるのも苦手で。
そこそこ手を抜くのも、要領よく何かをやるのも下手くそすぎた。


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