夏空、蝶々結び。
イジワル幽霊の荒療治2
お風呂でリラックスしたからか、風邪薬を飲んだせいか。
もしかしたら、本当にもしかしたら――部屋で誰かと会話したからか。
何だかほっとして、ふわふわ微睡む朝を味わっていた。
『おはよ。……って、まだ寝てるか。そろそろ起きないと遅刻するぞ』
(でも、まだ眠いです。 雅人さん……)
昨夜も熱帯夜だったはずなのに、今朝はすごく心地いい。もう少しだけ、こうしていたらダメ……かな。
『こら。……ったく、起きないと……』
「――起きないと、悪戯しちゃうよ? 」
夢と現実の間で、二人の声が重なる。
全く違う声で、全く同じことを囁かれ――けれど、どうしたって現実に勝るものはないのか。
最後に耳に残るのは、幽霊だけれど実際側にいる奴の方だった。
「……って、台詞あったよな。このゲーム」
まだ覚醒していない私の目の前に、ゲームソフトがぷかぷか浮いている。
「一応、イベントに忠実にやったつもりだけど、どうだった? 」
どうもこうもない。
悲しいことに、夢にまで見る有様であるだが、まさか、そんなこと言える訳もなく。
「別にどうもある訳ないでしょ! 」
「えー? かなえちゃんの好みだと思ってやってあげたのに……ってか、こんな男いねぇだろ」
ゲームを取り返そうと躍起になるのに、手を伸ばしては空を切るの繰り返し。
それもやがて飽きたのか、ゴンはふんと笑ってゲームをベッドに放り投げた。
「何なのよ、もう……。朝から余計な体力消耗させないでくれない? 」
おかげで目は覚めたけれど、仕事に行く前からくたくたになってしまう。
「かなえちゃんにはいいんじゃないの。夜体力使うこともないんだから、ちょっとは運動すれば」