夏空、蝶々結び。
「やだな。ちょっと優しくされて、すぐほだされちゃって。かなえちゃん、ご無沙汰だもんな? 」
あまりの言い草だが、一理ある。
昨日の一件で、ゴンのことを『優しいところも、あるのかもしれない』なんて、思ってしまった。
多分、それは正解で、そんな人を放っておくのは憚れるのだ。
「何の為にここにいるのよ。お節介焼く為だけじゃないでしょ? 」
けれど、私に高尚さや徳、まさか不思議な力なんかがあるはずもなく。
彼がここに留まる理由や原因を見つけて、解消する手伝いをするだけだ。
「そうだけど……ぼちぼちでいいよ。ここにいる目的、別にできたしさ」
私と一緒に過ごしたことで、もうそんなものができたとは。
彼と出会って喧嘩してばかりだったけれど、それも無駄ではなかったのかも。
もしかして、その目的が果たされたら――……。
「あんたと付き合ってくれる、物好きな男探し。あー、どっかにそんな変な趣味の奴、落ちてないですかねー」
――なんて、思ったのが間違いだった。
「……行ってきます!! 」
前言撤回。
これ以上は、時間の無駄だ。
「俺も行くって。俺たち、いつも一緒だろ」
「ソーデスネ」
どちらにせよ、ゴンが目的を達成するのはまだ先のようだ。