夏空、蝶々結び。

自分から発破をかけたくせに、既に興味なさそうにしている。それでも――。


「……何で、世話焼いてくれるの? 」


ゴンの思い残しを解消するのに、何の関係もない。
朝はああ言っていたけれど、寧ろ時間ばかり過ぎていくのに。


「かなえちゃんリア充化計画って、壮大すぎるミッションだし? あんまり難易度高すぎて……」


何それ。
確かにそんな簡単に充実した生活を送れるのなら、最初からこんなに拗れていないけれど。


「……かなえちゃんの恋が実ったらさ。もしかしたら、俺のこと叶えるよりもずっとスッキリして、あの世にいけるんじゃないかって……」


――よく分かんないけど、すげぇそんな気してる。


意地悪な笑い方はどこにいったの。
優しい目、しないでよ。いつも小馬鹿にして見下ろしてるくせに。

けれど、それも当然なのだろう。
ゴンが今見ているのは、心に浮かべているのは私のことじゃない。
きっと――彼が体を持ち、私以外の人誰でもみんなに認識されていた時のことだ。


「俺のことはどうしたって、俺の望むままには……叶わないから」


本来の名前のまま、彼の願いを叶えることは恐らく――不可能だと。
それを彼自身が受け止めるのには、苦悩がたくさんあったはずだ。

そんなふうに、笑顔で話せるようになるには。

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