夏空、蝶々結び。

それに比べたら、私のことなんて取るに足りない。
馬鹿馬鹿しいとも言えるのだろう。
なのにゴンは、馬鹿にしながらも助言をくれたり――多分、励ましてくれたりしている。


「俺と違って、かなえちゃんは、当たって砕けたくらいじゃ死なないだろ。あんた丈夫そうだし……もっと、どうにかなるよ」


やがて、ゴンも自分の様子に気づいたようだ。
憎まれ口が戻ってきた。


「何よ。私だって、そんなに図太い訳じゃ……」


それに相応しい声を出さなくちゃ。
そう思うのに、掠れるばかりで大した音にはなってくれない。
不満だったのか、ゴンが軽く舌打ちをした。
でも、続く彼の言葉だって、私には不満だったのだ。


「……ま、本当の本当にどうしようもないくらい砕け散ったら……しょうがないから慰めてやるよ」


上から目線で、失礼で、これ以上ないほどムカつくのに。


(……あんた、自分で分かってないでしょ)


――声は、痛々しいほど柔らかい。


「余計なお世話」


(馬鹿ゴン)


いつか……いつかきっと近いうちに。
ゴンの望みが、少しでも叶いますように。


< 32 / 114 >

この作品をシェア

pagetop