夏空、蝶々結び。


・・・


翌日の昼休み。


「で、何でそんなに大量に買うわけ? 」


紙袋を覗き込んでゴンが言う。
外に出てお店の行列に並んだ時も、注文した時も、会計をする時も。
お店から会社の帰り道、横断歩道を渡って歩道を歩くのだって。
ずっと一緒にいて知っているくせに、いちいち嫌味だ。


「まさか、他の奴にも配るなんて言うなよ。それにカナちゃんも入ってるとか? 」


だから、知っているでしょ。


「…………でも、余るし」


もちろん、私だって自分にガックリしているのだ。
先輩へのお礼だと思うと緊張してきて――つい、勢いで全員分でも余る数を買ってしまうなんて。


「そんなことしたら、特別だって伝わらないだろ。そもそもお礼にすらならないし」


本当に私は、常に言い訳を製造している。
今度は何故か余分に買ってしまった、チーズタルトの数。


「そ、そうだけど……」

「あー、もう。さっさと小分けして、雅人さんのとこ持ってけよ。邪魔が入る前に」


そうだ。
特別な想いは今はまだ置いといても、せめてお礼の気持ちくらいは。
そう思って、慌てて準備しかけて気づく。
何で、ゴンが先輩の名前を……。


「かなえちゃん、寝言酷すぎ……って、ほら来た!! 」

「うそ!? 」


叫びそうになった口を塞いだところで、先輩がお昼から帰ってきた。


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