夏空、蝶々結び。
「かなえちゃん! チーズは、甘いものに含まれないんじゃない? 」
そんな思いを噛み殺した私と違い、ゴンがストレートに告げてきた。
ゴンの言うように、チーズ単体だと甘いものには入らない。
でも、チーズタルトだと『スイーツ』に分類されると思う。
「んな、屁理屈言ってないで渡せって」
それに気まずいじゃない?
一人だけ受けとるのも、二人とも断るのも。
「は? またよく分かんない言い訳を……」
「そうですか……あ、先輩もよかったら食べません? 」
ゴンが文句を言っている間に、少しがっかりした様子でカナちゃんが私を見ていた。
「あ、ありがと」
基本的に悪い子じゃないのだ。
ちゃっかりしているというか、世の中を上手く渡り歩いているというか――私にない甘え上手さが羨ましくて、色眼鏡で見てしまうだけ。
仕事を通してみると、もちろん思うところはあるけれど。
「あ、矢原さんもよかったら」
なのに、さっきあんなことを考えた私は嫌な奴だ。
反省しつつ、自分のタルトを差し出していると。
「はぁぁぁ!? 」
ゴンの怒声が飛ぶ。
耳を塞ぎたくなるのを堪え、喜んでくれるカナちゃんに笑ってみせるのだった。