夏空、蝶々結び。
イジワル幽霊の荒療治3



今日も何てない朝のはずだ。
ニュースを見たり、会社に行くのが億劫でギリギリまでダラダラしたり。
そこにゴンがいて、何だかんだと悪態を吐かれ。
そんな日が今や日常で――いつしか不変的だと錯覚するほど。
目を開ければ、ここ数日と変わらずそんな一日が待っているのに、私はまだベッドで微睡んでいた。
だって、何かがあまりに心地いいから。


「かなえちゃん」


何か――それが、睫毛をくすぐっている気がする。


(変、だな……)


それは指先だった。

私はまだ目を閉じていて、夢と現実の間を行き来している。
意識は途切れ途切れ、なのに、触れられていると確信していた。


「かなえちゃんって」


目覚めつつあるのに、なおも瞼は重いままだ。


「起きなくていいの」


囁くような声は、まるで本当は起こす気がないように聞こえてしまう。


(ゴン、だよね……? )


彼だと認識していながら問いたくなるのは、この不思議な感覚のせいなのだろう。
幽霊なのに、実体がないのに――撫でられていると脳が判断している。
あり得ない――そう否定するしかないのが悲しくて、余計に瞼が頑固になる。
恋愛感情のように、ドキドキなんてできない。
寧ろ、声を上げて泣きたいほど苦しく、それでいて嫌ではなかった。


「……えちゃん……かなえちゃんって!! 」


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