夏空、蝶々結び。
「うわっ……!? 」
ガタガタッ!!
激しくベッドが揺れ、何事かと飛び起きる。
しっかり目を覚ましてみると、部屋は何の変わりもない。
ゴンが呆れ顔で浮かんでいるだけだ。
「あーもう、やっと起きた。俺に、無駄なことさせないでくれる」
ポルターガイストみたいなものなんだろうか。
頼んでない、と言いたいところだけれど、寝坊せずに済んだのは助かった。
「もっと、優しく起こしてくれたらいいのに」
そういえば、何度も名前を呼ばれたような。
微睡んでいた時は確信していたはずのに、今の憎たらしい顔を見ていると夢だったようにも思えてきた。
「ふーん……優しく、ね。次からそうしてやるよ。ご希望に添えなくてごめんね? 」
艶のある声が嘘っぽい。
嘘っぽすぎる。
それは分かっているのに対処できないのを見て、ゴンが偉そうにふんぞり返っている。
「早く準備しなよ。そのふざけた頭で出社するつもり? 」
そうだった。
寝る前に、髪をくるくる捩ってゴムで留めておいたのだ。
こうすると、翌朝は緩く髪が波打っているのだけれど。
確かに、解く前はちょっとマヌケかも。
「………似合わない」
ボソッと言われただけなのに、耳について離れない。
原因はゴンの声が意外と大きかったのか、それとも――私が思いのほか、傷ついているからか。