夏空、蝶々結び。
・・・
「うわ、佐々さん、もう終わったんですか? 」
コツコツ、真面目。
慣れてしまえば、けしてスピードも遅くない。
ゴンが長所としてくれただけでも、よしとするべきか。
なのに、そこでげんなりされるのは何故なのか。
「終わったよ」
それほど難しい作業ではないけれど、根気と集中力を要する。
「さすがですねぇ」
にこにこして、カナちゃんがお茶を淹れてくれた。
嬉しいけれども、彼女に頼みたい仕事は別にあるのだが。
「えー、俺なんかまだ全然ですよ」
大澤先輩に渡された仕事を、彼と半分に分けたのだ。
ちょっと進みが遅い気もするけれど――。
「まぁ、ずっとカナちゃんを眺めてたらね。終わんねぇだろ、そりゃ」
そういうことか。
彼女狙いは多いだろうから、頑張って――じゃなくて、仕事に支障なくやってほしい。
「定時で帰れそうですか? 」
確かに、早く帰りたい。
けれども、見るからに彼の進み具合いは芳しくなく。
カナちゃんに罪はないが、明らかに進捗を妨げている。
(……ったく)
「貸して。半分やるから」
「かなえちゃん! 」
ゴンが非難の声を浴びせてくる。
でも、この調子だと、いつまで経っても終わらない。
二人で任された以上、置いて帰るわけにもいかないし――。
「こら。甘やかすな」