夏空、蝶々結び。



・・・



古い洗濯機が音を立てている。
うるさいけれど、情けないくらいホッとした。


(洗濯物……)


そういえば、気になっていた。
ま、そんなに溜まってないからいいや。
そう思ったのが、ちょっと前。

ん……これくらいなら、まだ大丈夫。
そう思ったのは数日前だ。
まさか、その後倒れることになろうとはね。

それにしても、親切な人がいるものだ。
夏風邪で寝込んだ私の為に、洗濯までしてくれるなんて。
贅沢を言うなら、終わってからでもお粥を作ってくれたらなあ、なんて――……。


「んな訳ないし……!! 」


しつこいようだけど、私は一人暮らしだ。
もう随分前から物で溢れそうな、女の子らしい部屋とはとても言えないここに住んでいる。

そうだよ、一人で。

ルームシェアをしている女友達もいなければ、ましてや同棲している彼氏なんて――。


「あ、起きた」


――いる訳、ないから。


「ご飯にする? 熱下がったんならお風呂にする? それとも、あた……

「とっとと成仏して下さい」


お決まりとでもいうような台詞を遮る。
この部屋に連れ込んだ、記念すべきハジメテの男。
それが元(?)地縛霊なんて嫌すぎる。


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