夏空、蝶々結び。
優しい幽霊に触れるには
「……何してんの?」
ゴンがひょいと覗き込んでくる。
コーヒーを飲みながら、朝からスマホを弄っていた私は、慌ててタブを閉じた。
「なに。俺に見られたら困るようなサイト見てた? やらし」
「そんなんじゃないし! 」
一応、そう返してみたが、心の中で漏らした文句は別のもの。
(……知ってるくせに)
私が何を検索していたか、こいつには分かっているはずだ。
だからこそ邪魔をして――わざとそんなことを言い、牽制してくる。
(もう……)
さて、どうするべき?
『すげぇ、そんな気してる』
ゴンはそう言ったけれど。
あまりにも、やるせなかった。
彼が旅立つきっかけに、私が意見するのはおかしいかもしれない。
ゴンが言ったように、こちらに残した望みを彼自身の手で叶えるのは難しいかもしれない。
それでも、あんまりだと思うのだ。
赤の他人――たまたま一緒にいることになった、不本意ながら選んだ女の恋を応援して満足してしまうなんて。
だから、私なりに調べてみようと思って、『地縛霊』なんてワードを検索することから始めようと思ったのだが。
そんなことをしても、大した成果は得られないだろうと分かっていても、何の情報もないよりマシだと思ったのに。
当の本人に邪魔をされ、上手くいかない。
「ほーら、会社行くよ。雅人さん、口説きに行かないと」
(私の話にすり替えないでよね)
軽く睨んでも、ゴンは僅かに眉を上げただけだ。
『何か文句ある? 』
暗にそう言われたのかな。
それとも――……。
『それ以上、触れんなよ』
……だろうか。