夏空、蝶々結び。
「できたら苦労しないし、そもそもここにいないっての。何が悲しくて、こんな終わった女の洗濯しないといけないんだよ」
「頼んでないから!! 」
所詮、低級霊の悪口だ。
本来なら、けして聞こえるはずもないもの。
だというのに、想像以上に胸に重石を載せられていた。
重くて重くて、呼吸困難になりそう。
肉体はなくても、嫌でも見えてしまう姿が男だからだろうか。
初対面の男を部屋に入れるなんて、ちょっとあり得ないけれど――ともかく幽霊ですら、思うのだ。
私のことを、『終わってる』と。
いいのか悪いのか、私は傷ついていた。
自分で言うと、麻痺して楽になる気がするくせに。
「具合悪くて、ちょっと片付けられなかったって感じでもないし。一体、何をどう拗らせたらこうなるわけ」
「余計なお世話」
こじらせ。
これに似て非なる言葉が多数存在していて、自分がどれに当てはまるのか――それとも、どれも条件を満たしてしまうのか。
よく分からないけれど、検索すれば一発なのにそうしないのは、曖昧なままでいたいからだ。
「でもさ、そのくせ」
でも、だったらどうした。
私が何だろうと、どういう経緯で『終わった』のかも居候オバケには関係のない話だ。
「下着が派手ってお約束」
何度目か分からない目眩を催した。
くらくらして目を瞑ったのに、瞼の裏にしっかりと映っていた。
赤いレース、ひらひらと。