夏空、蝶々結び。
告げられた言葉に、心臓がドクドクと波打つ。
当然のものが有り難く、けれど涙を堪えるのに苦労した。
目の間にいる、私にとってはただの男性にはそれがない。
その事実を、改めて突きつけられたから。
「言っとくけど、泣ける話とかするつもりないから。俺の死因とここにいる理由は関係ないし、同情されたいわけでもない」
そう言われては、歯を食い縛るしかなかった。
同情なんかじゃないと、そんなつもりじゃないとどうして言える?
「今ないものに未練なんかない。ただ……気になることがあるだけ」
「なのに、ここから動けなかったなんて間抜けだろ」そう言って空笑いするゴンを前にして。
どうだっていいというような、軽い口調が切ない。
それが全部裏返しだと、苦しいくらい伝わってきた。
彼はここに立ったまま。
私に取り憑くと言いながら、ある程度動けるらしい今ですら。
「行こうよ、ゴン」
でも、私に憑いてまで、ここを離れたかったのだ。
つまり、この場に思いはあっても、目的の場所はここじゃない。
「そこに行ったら、離れて待ってるから。……あんたが落ち着くまで、ずっと待ってる。だから……」
迷うように、ゴンの目が揺らぐ。
でも、答えは最初からここにあるはず。
「逢いに行こう? 」
彼にとって、身体を失った理由よりもずっと気になったまま離れられない――今もとても大切な人に。