夏空、蝶々結び。
ガバッと飛び起きたのと、赤いレースーーいや、幽霊を見た衝撃で、再び私の意識は途切れ。
いろんな意味で、多少回復したのは翌朝のことだ。
迷ったけれど、会社は今日まで休むことにした。
これ以上のストレスは、今はまだ耐えられない。
「少しはよくなった? 」
何だかんだ言って、心配してくれたのだろうか。
しかし、お礼を言うよりも早く、彼は言葉を被せてきた。
「もう暇で暇で。仕方ないから、見たくもない寝顔、ずっと見ちゃった」
(…………損するとこだった)
可愛い笑顔で、いちいち言わなくてもいいことを。
「だから、頼んでないんだけど。それより」
寝顔も困るが、他のものを見られても困る。
わりと気に入っていた赤いものを思い出し、咳払いをした。
「どーーーしても、ここにいなきゃいけないんなら、ルールを守ってよ」
一体全体どういう訳で、出会ったばかりの幽霊と家族会議をしているのだろう、私は。
泣きたくなるのを堪え、提案する。
だって、きちんと決めておかないと、後々もっと酷いことになりそう。
「えー……。それ、俺にメリットあんの? あんたが俺に関与できることってそうないし、単に俺の行動が制限されるだけじゃん」
だが、痛いところを突き、奴は不平を漏らした。