夏空、蝶々結び。



・・・



これは、夢だ。
そうでなければ、こんなふうにゴンの想いが流れ込んでくるはずがない。
瞼に指先が触れるたび、まるで私の方が幽霊になったみたいに、彼を覗き見しているみたいな錯覚に陥るなんて。



・・・




腫れ上がった瞼に、恐る恐る指先を伸ばす。
こんな顔を見られたら、大澤に何か誤解されるかもしれない。


(治る……わけねぇか)


指を瞼から離しても、何の変化もない。


(アホらし)


かなえに取り憑いた、悪い霊だ。
そんなものに癒しの力を期待するなんて、我ながら失笑を禁じ得ない。
それに、それどころか――……。


(触ることすら、できねぇのにな)


そこまで考えて、深く息を吐いた。
――触れたいと思っているのか。
今夜も変わらず、無防備に眠るこの女に。

泣き疲れたのか、少し肌寒いのか。
かなえにしては、お行儀よくベッドに横になっている。


「何であんたが、そんなにぐったりしてんの」


できるだけ、呆れた声を出してみる。
でないと、本当におかしな気分になりそうだった。

こんな男――いや、はた迷惑な名無しの幽霊の為に奔走し、疲れ果てて。
瞼を腫らして眠るのを見ると、どうにかなりそうだ。


(カラダがないってのに、何でこんな気になるんだよ)


泣きたいくらい感謝しているのに、だからこそ、めちゃくちゃにしてしまいたくなるような。

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