夏空、蝶々結び。



・・・


何だか、頭がぼうっとする。
頭を働かせようとすると、思い出してはいけない何かが溢れかえってきそうで。
よく分からないまま、蓋をして押し込むように翌朝出社した。


「おはようございます」


まだ、瞼が重い。
赤みは化粧で誤魔化せるが、ぷっくり腫れているのはどうしようもなかった。


(休んだ理由、変に誤解されないといいけど)


それも風邪のせいなんて、かなり無理がある。
いや、誰も気にしないか。


「おは………、大丈夫、か? 」


そう思ったのに、仕事中は能面みたいな大澤先輩が明らかに動揺している。


(あぁ……やっぱり、酷い顔してるか……)


「はい。休んでばかりですみません」


が、ここは会社で大人同士。
理由を尋ねることがなければ、わざわざ説明することもないはずだ。

ゴンに付き添う為に休んだことに、後悔はない。それでも、迷惑をかけたことには変わりないし。


「それはいいけど……ぶり返したんだな。ごめん、やっぱり俺が遅くまで引き留めたから……」


なのに、そんなに申し訳なさそうに言わ動揺が伝染し、恐縮してしまう。


「いえ、そんなこと……」

「遅くまで? 」

「……引き留めた……? 」


否定する間もなく口々に復唱され、いつの間にか数人興味津々でこちらを見ていた。


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