夏空、蝶々結び。
「せいぜい、俺みたいな善良な霊でよかったと思って、感謝したら」
ふんぞり返って言うけれど、善良だと言うなら解放してよ。
「どこが! 大体、あんたも男なら、もうちょっと気を遣ってくれない!? 」
洗濯は……私にも非があるが、寝顔やら人の趣味や好みを悪く言われる筋はない。
そりゃあ、確かに……誰の好みを意識して買ったんじゃないけども。
そんなの私の勝手だし、ほら……赤って健康にいいって言うじゃない。
(……どんな言い訳)
その場に崩れ落ちたいほど情けない。
なのに、彼は不思議と笑わなかった。
「……いいよ」
不機嫌そうではあるが、そう言ったのだ。
「え」
「条件にもよるけど言ってみたら。その、ルールっての」
急に変わって驚いたけれど、彼は鼻を鳴らすだけ。
「早くしないと、気が変わる」
理由を言うつもりはないらしい。
何にせよ、交渉を進めるべきだろう。
ううん、本当は――……私は、聞こえていたのかもしれない。
どう反応していいか、分からなかったのだ。
『……男って、思ってくれるんだ』
当たり前のように思っていたことに、心底驚いたようなその切ない呟きに。