夏空、蝶々結び。
・・・
全く異なるタイプの女が二人、何やら楽しげに仕事をしている。
別に普通のことなのに、私とカナちゃんの場合は相当異様な光景なのだろう。
皆、少し気味が悪そうに眺めている。
大澤先輩はといえば、
『いいんじゃないか? どっちにも勉強になって』
そう言って、何故か悪戯っぽく笑っていた。
ともあれ、上司から許可も得たので、心置きなく作業していたのだが。
「おーい、矢原さん、お茶」
(まったくもう……)
仕事を中断させてまで、お茶を淹れてほしいのだろうか。暇なら、自分でやればいいのに。
「矢原さーん」
甘えるような声に、二人で顔を顰めた。
(……そうだよね)
いつもいつも、嫌だっただろうな。
今なら、彼女は彼女なりに頑張ったのだと思える。
『誰も分かってくれない』のは、お互い様だったのだ。
「待って」
根負けして立ち上がる彼女を制し、私はつかつかと靴音を響かせながら歩いた。
呼ばれてもいないのに近寄るには、勇気が必要だったから。
「……あの、矢原さん、今忙しいので」
『自分で淹れたらどうですか』
を、どうにか飲み込み、でもできるだけ声音に乗せようとした。