時間切れ

それから、慎一さんからの "離婚して欲しい" という、電話はこなかった。

その代わり岩本さんから電話があり、また会う事になった。
約束のカフェへ行くと、岩本さんが先にいて待っていた。

「わざわざお呼びだてして、申し訳ありません。」

「いいえ。 お話しは何でしょうか?」

「はい… 以前奥様とお話しした後で、
奥様がおっしゃっていたように早川さんに言ったんです…
そうしたら、はぐらかされて…
何度もお願いしたのに奥様へ『離婚してくれ。』と電話してくれませんでした。

私も既婚者の友人に相談するうちに、
やっと、早川さんは遊びなんだと気づきました。
本当に申し訳ありませんでした。

先週、私から別れ話をしました。
私は、今のアパートを引き払い来週実家へ帰ります。
奥様に嫌な思いをさせてすみませんでした。

どうしても謝りたくて…
それと… 図々しいのですが…慰謝料は払えないので勘弁していただけませんでしょうか…」

「はぁ〜。 岩本さん、話しはわかりました。
貴方も、早川に私との事は話しをしてないんでしょう?」

「ハイ。奥様に会って、離婚してと言って早川さんに嫌われたくなかったから……」

「そうですかぁ… わかりました。
慰謝料は、請求しません。その代わり、貴方は幸せになる努力をして下さい。
お体に気をつけてお元気で… 失礼します。」


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