時間切れ


陸と好美は、「母さん! 典子〜……」と叫んでる。 

汗をかきながら心臓マッサージをしている高野先生が典子に
「戻ってこい!篠原さん!篠原さん!」っと、

叫びに近い声を出していた。

他の先生が、高野先生の手を握り首を横に振る。 

高野先生は「チクショ! なんで…だよ。」
と、うなだれていた。

悔しそうな顔で、奥歯を噛み締め俺たちに深く頭を下げた。

他の先生が死亡時刻と死因を言い

典子は、45歳の生涯を終えた。



南のお義母さんは泣き崩れてお義父さんに抱えられ、

陸も床に手をついて、崩れた。

龍一父さんが陸を抱きしめていた。

俺は、ただ呆然と立ち尽くしていた。

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