ハージェント家の天使
 御國は不審がる事もなく、その同級生の自宅に行ったのだった。
 ーーそれが、そもそもの間違いだった。
 同級生は男子を呼んでくると、自宅に戻ったのだった。

 男子は近くの公園に御國を連れて行った。
 住宅街の中にある小さな公園だった。
 夜も遅く、街灯も少ない公園だったが、近くの民家からの明かりもあって、そこそこ明るかった。
 男子はその公園のベンチに座ると、隣に座るように行った。

 御國が隣に座ると、男子は突然、御國に襲い掛かったのだった。
 ベンチに押し倒された御國は、必死に抵抗した。
 なんとか、男子から逃れると御國は叫んだ。
「いきなり何をするの!?」
 すると、男子は納得がいかないような顔で言ったのだった。
「やらせてくれるから、ここに来たんじゃないの?」と。
 怒り心頭に発した御國は、「最低!」とだけ吐き捨てて公園を後にしようとした。

 御國が男子に背を向けて、公園の出口に向かっていると、今度は後ろから背中を蹴られた。
 うつ伏せに倒れると、男子は御國の背中を踏みつけた。
 そして、平手で御國の頭を殴ったのだった。
「なんだよ。使えないな……」
「つ、使えない……?」
「この為に優しくしてきたのにさ……」
 男子は吐き捨てると足を退かした。すると、御國の背中に手を入れてきた。
 御國は必死で抵抗したが、男子は御國の下着の上から胸を揉んだのだった。

「止めて……! 止めて! 止めてぇ!」
 御國は必死に抵抗すると、男子をつき飛ばした。
 そうして、脇目も振らずに、自宅へと逃げ帰った。
 すぐに部屋に駆け込むと、男子が触った胸ーー特に乳首を、何度もタオルで拭いた。
 とにかく気持ち悪かった。吐き気がした。
 両目からは自然と涙が溢れてきた。
 御國は泣きながら、何度もタオルで胸を擦ったのだった。

 モニカから御國の頃の話を聞いたマキウスは、両手を強く握りしめて、歯をくいしばった。
「許せませんね。モニカに、女性にそのような事をするなど」
「もう昔の事です。それに、その男子も怒られた筈です。その夜の内に、私の異変に気付いた親に事情を聞かれて白状しました」

 泣きながら部屋で胸を擦っていると、御國の異変に気付いた母親が部屋にやってきた。
 事情を聞かれたが、御國は男子に安易について行った恥ずかしさから黙っていた。
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