ハージェント家の天使
「私の方こそ、取り乱してすまない。1番辛いのは、モニカ達だというのに……」
「そんな事な……。ありません」
モニカは首を振った。
「辛いのは、おにい……。リュドさんです。大切な妹さんを失ったんです。幸せになって欲しくて、この国に花嫁として送り出したのに……」
リュドは妹に幸せになって欲しくて、この国に妹を送り出した。
その為に、自分へ与えられる筈だった褒美も捨てて。
「いや。私の事はいいんだ。それなら、貧民街でモニカに会った時に、違和感があったのも納得した。私の事を知らなかったんだな……」
「そうです。でも、『モニカ』さんの記憶が残っていたので、リュドさんの事は分かりました。さすがに、リュドさんとの思い出を全ては覚えていませんが……」
「モニカ。いや、モニカの中にいる貴女」
リュドの言葉に、モニカはリュドを見つめた。
「1つだけ教えて欲しい。モニカは幸せだったのか……。妹は花嫁としてこの国に来て良かったのか、教えて欲しい」
リュドは眉根を寄せた。
「妹は国から迎えが来るまで、この国に来るのを、あまり喜んでいなかったんだ。ただ、困っているように笑っているだけで」
国から花嫁の迎えが来るまで、「モニカ」はずっと困ったように笑っていた。何かを我慢しているように。
けれども、「モニカ」は何も話す事が無く、国を出てしまったのだった。
「私は間違った事をしてしまったのではないだろうか。『モニカ』にとって間違った事を」
「それは……」
モニカは悲痛な顔をするリュドを見つめた。思い出そう。
きっと「モニカ」から引き継いだ記憶ーー「モニカ備忘録」の中に答えはあるだろうから。
モニカは思い返した。そうして、口を開いたのだった。
「リュドさんは間違っていません。……『モニカ』さんも」
リュドがモニカを見つめてきた。
「『モニカ』さんには好きな人がいたんです。だから、国を離れたく無かった」
「モニカ」には想い人が居た。それは「モニカ」にとって、極身近な人だった。
「その相手が、リュドさん……。貴方です」
「そうなのですか?」
これにはマキウスも驚いたらしい。モニカの顔を覗き込んできたのだった。
モニカは頷くと、「はい」と続けた。
「けれども、リュドさんが喜んでいるから伝えなかったんです。自分の事を大切にしてくれるお兄ちゃんが喜んでいたから」
「そんな事な……。ありません」
モニカは首を振った。
「辛いのは、おにい……。リュドさんです。大切な妹さんを失ったんです。幸せになって欲しくて、この国に花嫁として送り出したのに……」
リュドは妹に幸せになって欲しくて、この国に妹を送り出した。
その為に、自分へ与えられる筈だった褒美も捨てて。
「いや。私の事はいいんだ。それなら、貧民街でモニカに会った時に、違和感があったのも納得した。私の事を知らなかったんだな……」
「そうです。でも、『モニカ』さんの記憶が残っていたので、リュドさんの事は分かりました。さすがに、リュドさんとの思い出を全ては覚えていませんが……」
「モニカ。いや、モニカの中にいる貴女」
リュドの言葉に、モニカはリュドを見つめた。
「1つだけ教えて欲しい。モニカは幸せだったのか……。妹は花嫁としてこの国に来て良かったのか、教えて欲しい」
リュドは眉根を寄せた。
「妹は国から迎えが来るまで、この国に来るのを、あまり喜んでいなかったんだ。ただ、困っているように笑っているだけで」
国から花嫁の迎えが来るまで、「モニカ」はずっと困ったように笑っていた。何かを我慢しているように。
けれども、「モニカ」は何も話す事が無く、国を出てしまったのだった。
「私は間違った事をしてしまったのではないだろうか。『モニカ』にとって間違った事を」
「それは……」
モニカは悲痛な顔をするリュドを見つめた。思い出そう。
きっと「モニカ」から引き継いだ記憶ーー「モニカ備忘録」の中に答えはあるだろうから。
モニカは思い返した。そうして、口を開いたのだった。
「リュドさんは間違っていません。……『モニカ』さんも」
リュドがモニカを見つめてきた。
「『モニカ』さんには好きな人がいたんです。だから、国を離れたく無かった」
「モニカ」には想い人が居た。それは「モニカ」にとって、極身近な人だった。
「その相手が、リュドさん……。貴方です」
「そうなのですか?」
これにはマキウスも驚いたらしい。モニカの顔を覗き込んできたのだった。
モニカは頷くと、「はい」と続けた。
「けれども、リュドさんが喜んでいるから伝えなかったんです。自分の事を大切にしてくれるお兄ちゃんが喜んでいたから」