ハージェント家の天使
マキウスが男爵家に戻されてすぐ、私は晩年の大叔母様にお会いした事があります」
ヴィオーラが会った大叔母様こと「天使」は、とても不思議な雰囲気を持った人であった。
まるで、澄んだ湖のように静かで、穏やかで、けれども芯の強さも感じた。
「私がお会いしてすぐに、大叔母様は他界されました。会えたのは、たった一度だけ。それでも、今でもまだ鮮明に覚えています」
大叔父と大叔母の間には子供はいなかった。大叔母亡き後、オルタンシア家は途絶えてしまったのだった。
ヴィオーラは「モニカさん」と声を掛けた。
「モニカさんを見ていると、誰かに似ていると思っていました。でも、今ならわかります」
ヴィオーラはモニカに向かって、微笑んだのだった。
「モニカさんは大叔母様に似ているのですね。神秘的な雰囲気やどこか犯しがたい、芯の強さ、強い意志を持ったその姿……。本当に大叔母様にそっくりです!」
「そ……。そうですか? どちらかと言えば、お姉様の方が、その言葉がよく似合います」
「私など、まだまだです。まだ大叔母様の様にはなれません」
ヴィオーラは首を振った。モニカとマキウスがオルタンシア家の「天使」で盛り上がっている間、ヴィオーラは誰にも聞かれないように呟いたのだった。
「まだまだ、守りたい者を守るには程遠いのです」
その呟きを、リュドだけが聞いていたのだった。
「さて、モニカさんについてわかったところで、私達はお暇しましょう」
「えっ!? せっかくなので、夕食もご一緒しませんか?」
モニカがヴィオーラとリュドに縋るが、2人は丁重に断ったのだった。
「あまり長居してもご迷惑でしょう。夫婦の時間の邪魔をして」
「そんな事無いですよ。ねぇ? マキウス様?」
モニカの言葉に、マキウスも頷いたが、ヴィオーラは苦笑しただけであった。
「それでは、また今度、お邪魔しますね」
ヴィオーラは立ち上がると、さっと扉に向かって行った。
すると、その背中にリュドは「ヴィオーラ殿」と、声を掛けたのだった。
「私はマキウス殿と、少々話しをしてから戻ります」
振り振り返ったヴィオーラは、「わかりました」と、答えると部屋から出て行ったのだった。
「あっ! 待って下さい! お姉様! お見送りさせて下さい!」
ヴィオーラを追いかけるように、モニカも部屋を出て行ったのだった。
ヴィオーラが会った大叔母様こと「天使」は、とても不思議な雰囲気を持った人であった。
まるで、澄んだ湖のように静かで、穏やかで、けれども芯の強さも感じた。
「私がお会いしてすぐに、大叔母様は他界されました。会えたのは、たった一度だけ。それでも、今でもまだ鮮明に覚えています」
大叔父と大叔母の間には子供はいなかった。大叔母亡き後、オルタンシア家は途絶えてしまったのだった。
ヴィオーラは「モニカさん」と声を掛けた。
「モニカさんを見ていると、誰かに似ていると思っていました。でも、今ならわかります」
ヴィオーラはモニカに向かって、微笑んだのだった。
「モニカさんは大叔母様に似ているのですね。神秘的な雰囲気やどこか犯しがたい、芯の強さ、強い意志を持ったその姿……。本当に大叔母様にそっくりです!」
「そ……。そうですか? どちらかと言えば、お姉様の方が、その言葉がよく似合います」
「私など、まだまだです。まだ大叔母様の様にはなれません」
ヴィオーラは首を振った。モニカとマキウスがオルタンシア家の「天使」で盛り上がっている間、ヴィオーラは誰にも聞かれないように呟いたのだった。
「まだまだ、守りたい者を守るには程遠いのです」
その呟きを、リュドだけが聞いていたのだった。
「さて、モニカさんについてわかったところで、私達はお暇しましょう」
「えっ!? せっかくなので、夕食もご一緒しませんか?」
モニカがヴィオーラとリュドに縋るが、2人は丁重に断ったのだった。
「あまり長居してもご迷惑でしょう。夫婦の時間の邪魔をして」
「そんな事無いですよ。ねぇ? マキウス様?」
モニカの言葉に、マキウスも頷いたが、ヴィオーラは苦笑しただけであった。
「それでは、また今度、お邪魔しますね」
ヴィオーラは立ち上がると、さっと扉に向かって行った。
すると、その背中にリュドは「ヴィオーラ殿」と、声を掛けたのだった。
「私はマキウス殿と、少々話しをしてから戻ります」
振り振り返ったヴィオーラは、「わかりました」と、答えると部屋から出て行ったのだった。
「あっ! 待って下さい! お姉様! お見送りさせて下さい!」
ヴィオーラを追いかけるように、モニカも部屋を出て行ったのだった。