ハージェント家の天使
「いいのですよ。私も義妹と話していました。ねぇ? モニカさん?」
モニカはヴィオーラから身体を離すと、「はい。お姉様」と笑い返したのだった。
「モニカさん。もしかしたら、今後お役に立つかもしれないので、教えておきますね」
「はい?」
「オルタンシア家の『天使』の名前は、オフィーリアという名前でした。かつて、教鞭をとられていた事もあるそうで、とてもお話上手な大叔母様でした」
当時、マキウスと連絡が取れず、母の使用人に監視されている生活を送っていたヴィオーラは、思うように動けず苦しい思いをしていた。
そんなヴィオーラの話を聞いてくれたのが大叔母であった。
大叔母はこの世界に来てからも、身分にとらわれる事なく、貴族から使用人、商家や下町の住民など子供たちに教育を施していたようだった。
実際に、王都の下町や貧民街に住んでいる者の中には、大叔母から教育を受けた者がいる。
だが、その時の大叔母とヴィオーラの仲が、母親にとって良くなかったようで、その後、ヴィオーラは大叔母に会わせてもらうどころか、大叔母の葬儀にも参列させてもらえなかったが。
「オフィーリアさん……」
「ええ。生きていたら、きっとモニカさんの良き相談相手になっていたと思います。大叔母様もこの世界に来た時に、苦労をなされているはずですから」
「そうですね。私もお会いしてみたかったです」
大叔母はどうやってこの世界に来て、どうやって生活していたのだろう。
モニカは「天使」だった大叔母に想いを馳せたのだった。
ヴィオーラ達が話し込んでいる間に、マキウスが手配してくれた馬車が既に待っていたようだった。
ヴィオーラとリュドは、モニカと後からやってきたマキウスの2人に見送られながら、屋敷を後にしたのだった。
「リュド様」
馬車の中で、2人を見送るモニカとマキウスから視線を戻しながら、ヴィオーラは声を掛けた。
「いつから、私達の会話を聞いていましたか?」
「気づいていましたか?」
リュドは目を見張った。ヴィオーラは「ええ」と、笑った。
「私達の耳は、どんな些細な音でも聞こえてしまうのです。物陰にやって来て、私達の会話を聞いていた者の足音も」
リュドはバツが悪い顔をした。
モニカはヴィオーラから身体を離すと、「はい。お姉様」と笑い返したのだった。
「モニカさん。もしかしたら、今後お役に立つかもしれないので、教えておきますね」
「はい?」
「オルタンシア家の『天使』の名前は、オフィーリアという名前でした。かつて、教鞭をとられていた事もあるそうで、とてもお話上手な大叔母様でした」
当時、マキウスと連絡が取れず、母の使用人に監視されている生活を送っていたヴィオーラは、思うように動けず苦しい思いをしていた。
そんなヴィオーラの話を聞いてくれたのが大叔母であった。
大叔母はこの世界に来てからも、身分にとらわれる事なく、貴族から使用人、商家や下町の住民など子供たちに教育を施していたようだった。
実際に、王都の下町や貧民街に住んでいる者の中には、大叔母から教育を受けた者がいる。
だが、その時の大叔母とヴィオーラの仲が、母親にとって良くなかったようで、その後、ヴィオーラは大叔母に会わせてもらうどころか、大叔母の葬儀にも参列させてもらえなかったが。
「オフィーリアさん……」
「ええ。生きていたら、きっとモニカさんの良き相談相手になっていたと思います。大叔母様もこの世界に来た時に、苦労をなされているはずですから」
「そうですね。私もお会いしてみたかったです」
大叔母はどうやってこの世界に来て、どうやって生活していたのだろう。
モニカは「天使」だった大叔母に想いを馳せたのだった。
ヴィオーラ達が話し込んでいる間に、マキウスが手配してくれた馬車が既に待っていたようだった。
ヴィオーラとリュドは、モニカと後からやってきたマキウスの2人に見送られながら、屋敷を後にしたのだった。
「リュド様」
馬車の中で、2人を見送るモニカとマキウスから視線を戻しながら、ヴィオーラは声を掛けた。
「いつから、私達の会話を聞いていましたか?」
「気づいていましたか?」
リュドは目を見張った。ヴィオーラは「ええ」と、笑った。
「私達の耳は、どんな些細な音でも聞こえてしまうのです。物陰にやって来て、私達の会話を聞いていた者の足音も」
リュドはバツが悪い顔をした。