ハージェント家の天使
その様子を見たマキウスは「今度、書き物机を用意しますね」と苦笑したのだった。
「ここに名前を書けばいいんですね?」
「そうです」
モニカが指差した箇所を見たマキウスは頷いた。
けれども、モニカがペンを握ったまま固まってしまったので、マキウスは眉をひそめたのだった。
「どうしましたか? もしかして、文字が書けませんか……?」
マキウスが心配そうに問いかけてくるが、モニカは首を振ったのだった。
「いいえ。そうじゃないんです。なんだか、緊張してしまって」
婚姻届に名前を書いて、マキウスの妻になる。
それ自体は何も心配はない。不安も。
「まだ、自分がモニカになったという自覚が無いんです。だから、間違えずに名前を書けるか緊張してしまって」
今でも気を抜くと、元の世界での名前である「御國」と書いてしまいそうだった。
「モニカ」としてこれから生きると決めた以上、しっかりしなければならないのに。
すると、マキウスは安心させるように微笑んだ。
「何回、書き間違えても大丈夫ですよ。婚姻届はいくらでももらってこれますからね。仕事先から」
「そういえばそうでしたね」とモニカは安心すると、婚姻届に名前を書いたのだった。
「はい。書けました」
モニカが渡した婚姻届をマキウスは眺めると、満足そうに頷いたのだった。
「ありがとうございます。それでは、明日、騎士団に提出しておきます」
「ところで、どうして騎士団に婚姻届出すんですか? お役所……。戸籍を管理しているのは別の場所だと思っていました」
「ああ。それは、騎士団の一部が担っているからですよ」
マキウスによると、かつては国の治安を守る騎士団と国を運営する役人は別々の組織だったが、何百年前に役人達の一部が大きな不正を行ってからは、騎士団が国の運営も管理するようになったらしい。
「特に、私と貴方は国同士の政略結婚の一環として、結婚する事になります。騎士団も私達の動向に注目しています」
モニカは「えっ!」と目を見開く。
「そうだったんですか? まあ、それなら、これまでの関係も分からなくもないですが」
「モニカ」とマキウスが不仲だった理由。
それは政略結婚にあったのだろうか。
マキウスは顔を顰めた。
「まあ、その可能性も無くはありません。他にも、私の身分が関係しているのかもしれませんが」
「ここに名前を書けばいいんですね?」
「そうです」
モニカが指差した箇所を見たマキウスは頷いた。
けれども、モニカがペンを握ったまま固まってしまったので、マキウスは眉をひそめたのだった。
「どうしましたか? もしかして、文字が書けませんか……?」
マキウスが心配そうに問いかけてくるが、モニカは首を振ったのだった。
「いいえ。そうじゃないんです。なんだか、緊張してしまって」
婚姻届に名前を書いて、マキウスの妻になる。
それ自体は何も心配はない。不安も。
「まだ、自分がモニカになったという自覚が無いんです。だから、間違えずに名前を書けるか緊張してしまって」
今でも気を抜くと、元の世界での名前である「御國」と書いてしまいそうだった。
「モニカ」としてこれから生きると決めた以上、しっかりしなければならないのに。
すると、マキウスは安心させるように微笑んだ。
「何回、書き間違えても大丈夫ですよ。婚姻届はいくらでももらってこれますからね。仕事先から」
「そういえばそうでしたね」とモニカは安心すると、婚姻届に名前を書いたのだった。
「はい。書けました」
モニカが渡した婚姻届をマキウスは眺めると、満足そうに頷いたのだった。
「ありがとうございます。それでは、明日、騎士団に提出しておきます」
「ところで、どうして騎士団に婚姻届出すんですか? お役所……。戸籍を管理しているのは別の場所だと思っていました」
「ああ。それは、騎士団の一部が担っているからですよ」
マキウスによると、かつては国の治安を守る騎士団と国を運営する役人は別々の組織だったが、何百年前に役人達の一部が大きな不正を行ってからは、騎士団が国の運営も管理するようになったらしい。
「特に、私と貴方は国同士の政略結婚の一環として、結婚する事になります。騎士団も私達の動向に注目しています」
モニカは「えっ!」と目を見開く。
「そうだったんですか? まあ、それなら、これまでの関係も分からなくもないですが」
「モニカ」とマキウスが不仲だった理由。
それは政略結婚にあったのだろうか。
マキウスは顔を顰めた。
「まあ、その可能性も無くはありません。他にも、私の身分が関係しているのかもしれませんが」