ハージェント家の天使
(授乳ってこんなにくすぐったいんだ……)
乳首を吸われる度に、御國はくすぐったさを感じたのだった。
赤子がひとしきり母乳を飲んだ後は、身体が勝手に赤子の背を叩いてゲップさせた。
そうして、お腹が満たされた赤子は安心したように眠ったのだった。
穏やかに眠る赤子の顔を見ていた御國は、ふいにポツリと呟いたのだった。
「ニコラ」
良かったと安心したところで、御國は我に返ったのだった。
(どうして、私は赤ちゃんの抱き方や授乳の仕方を知っているんだろう……? そもそも、どうして母乳が出来るの?)
御國は赤子を産んだ事も無いどころか、男性とお付き合いをした事さえなかった。
それなのに、どうして一連の育児が出来るのだろうか。
(それに今、ニコラって呟かなかった……? ニコラってこの子の名前?)
先程、御國が無意識に呟いた「ニコラ」。
それがこの赤子の名前だとしたら、どうして自分は知っているんだろう。
(それにこの部屋……。私は階段から落ちて死んだはずじゃ)
赤子ーーニコラが眠った事で、御國はようやく落ち着いて部屋の中を見回した。
シンプルながらも女性らしさが溢れた室内には、御國が寝かされていたベッドと、沢山の化粧品が置かれた鏡台、本棚、ニコラのベビーベッドがあった。
そうして、ベビーベッドの近くには大きな窓と、小さなバルコニーがあったのだった。
御國はニコラを抱いたまま、恐る恐る近く。
窓ガラスに近づくと、反射して人が映ったのだった。
そこに映っていたのは。
「誰なの? この人?」
ガラスに映っていたのは、胸より下まであるストレートの金色の髪と、深い海の様な青い瞳を丸く見開いた、愛らしい丸い顔立ちの女性だった。
丸い顔立ちは、御國よりもずっと可愛らしかった。
御國よりも若い20代前半くらいの女性の腕の中には、女性と同じ色の髪をした赤子ーーニコラがいたのだった。
御國が手を伸ばしてガラスに触れると、同じようにガラスに映っている女性も御國に向かって手を伸ばしてきたのだった。
「もしかして、私なの?」
その時、扉が控え目にノックされた。
「失礼します。遅くなって申し訳ありません。ニコラ様」
扉を開けながら入ってきたのは、若い女性だった。
女性は白いフリルのエプロンドレスを着ており、メイド服のようだと御國は思った。
乳首を吸われる度に、御國はくすぐったさを感じたのだった。
赤子がひとしきり母乳を飲んだ後は、身体が勝手に赤子の背を叩いてゲップさせた。
そうして、お腹が満たされた赤子は安心したように眠ったのだった。
穏やかに眠る赤子の顔を見ていた御國は、ふいにポツリと呟いたのだった。
「ニコラ」
良かったと安心したところで、御國は我に返ったのだった。
(どうして、私は赤ちゃんの抱き方や授乳の仕方を知っているんだろう……? そもそも、どうして母乳が出来るの?)
御國は赤子を産んだ事も無いどころか、男性とお付き合いをした事さえなかった。
それなのに、どうして一連の育児が出来るのだろうか。
(それに今、ニコラって呟かなかった……? ニコラってこの子の名前?)
先程、御國が無意識に呟いた「ニコラ」。
それがこの赤子の名前だとしたら、どうして自分は知っているんだろう。
(それにこの部屋……。私は階段から落ちて死んだはずじゃ)
赤子ーーニコラが眠った事で、御國はようやく落ち着いて部屋の中を見回した。
シンプルながらも女性らしさが溢れた室内には、御國が寝かされていたベッドと、沢山の化粧品が置かれた鏡台、本棚、ニコラのベビーベッドがあった。
そうして、ベビーベッドの近くには大きな窓と、小さなバルコニーがあったのだった。
御國はニコラを抱いたまま、恐る恐る近く。
窓ガラスに近づくと、反射して人が映ったのだった。
そこに映っていたのは。
「誰なの? この人?」
ガラスに映っていたのは、胸より下まであるストレートの金色の髪と、深い海の様な青い瞳を丸く見開いた、愛らしい丸い顔立ちの女性だった。
丸い顔立ちは、御國よりもずっと可愛らしかった。
御國よりも若い20代前半くらいの女性の腕の中には、女性と同じ色の髪をした赤子ーーニコラがいたのだった。
御國が手を伸ばしてガラスに触れると、同じようにガラスに映っている女性も御國に向かって手を伸ばしてきたのだった。
「もしかして、私なの?」
その時、扉が控え目にノックされた。
「失礼します。遅くなって申し訳ありません。ニコラ様」
扉を開けながら入ってきたのは、若い女性だった。
女性は白いフリルのエプロンドレスを着ており、メイド服のようだと御國は思った。