ハージェント家の天使

魔法石と認証

「どうしたらいいのかな……？」
　ヴィオーラが帰った後、モニカが客間で考え込んでいると、ヴィオーラと入れ違いにマキウスが帰宅したのだった。
　帰宅する途中でヴィオーラとすれ違ったのか、マキウスは渋い顔をして客間に入ってきた。
「モニカ」
「あ、おかえりなさい。マキウス様」
　マキウスは不機嫌を隠さないまま、モニカの元にやってきたのだった。
「隊長が来ていたんですか？」
「はい。私がお願いしていた魔法石が完成したので、急ぎ持って来て下さったそうです」
　モニカが魔法石の指輪をはめた手をマキウスに差し出すと、マキウスはモニカの手を取ってマジマジと指輪を見ると頷いたのだった。
「随分と、早く完成したのですね」
「ヴィオーラ様によると、最初にマキウス様から魔力をもらうようにとの事でした。そうすると、魔法石がマキウス様の魔力を認識するようになるという事でしたが……？」
「ええ。その通りです。後ほど、寝室に来て頂けますか？ その時に魔力を補充します」
　そうして、マキウスはモニカの手を離したのだった。

　その日の夜、モニカがマキウスの寝室に向かうと、バルコニーから風に靡く灰色の髪が見えたのだった。
「マキウス様」
「お待ちしていました。ニコラは大丈夫でしたか？」
「はい。アマンテさんにお願いしました」
　湯を浴びてきたのか、マキウスの髪は解かれ、風に靡いていたのだった。
（こうして見ると、ヴィオーラ様にそっくり……）
　マキウスの髪や瞳の色だけではなく、顔立ちもヴィオーラによく似ていたのだった。
　夕方に、モニカがニコラを置いてヴィオーラと会っている間に、ニコラが泣いて騒いだらしい。
　気づいたアマンテがニコラをあやしたが泣き止まず、困ったアマンテは普段、モニカが使用しているベットにニコラを寝かせたらしい。
　以前、モニカが初めて外出をした際に教えた宥める方法をアマンテが使うと、ニコラはすんなり泣き止んで寝たらしい。
　恐らく、ベットに残っていたモニカの匂いや熱にニコラが落ち着いたのだろう。
　半信半疑で試したアマンテからは感激されたのだった。

「それは良かった。貴方は育児を頑張り過ぎているところがあります。休める時はしっかり休んで下さい」
「ありがとうございます」と、モニカはマキウスに微笑んだ。
　そうして、バルコニーから室内に戻ってきたマキウスに先導されて、モニカはベットに座ったのだった。