ハージェント家の天使
マキウスにとっての「条件」が、国の為に政略結婚をする事ーーガランツスの「花嫁」を妻として迎え入れる事であった。
「貴方にとっては意に染まぬ結婚。きっと私の事を恨んでいるだろうと思っていましたが……。上手くやれているのならば安心しました」
ヴィオーラはそっと胸を撫で下ろした。
「父のように、モニカさんを娶った後に、本当に好きな女性を娶るのかとも思いましたが……」
「そこまでの余裕が、我が家にあるとお思いで?」
姉弟の父親のように、複数人を養えるならば一夫多妻をしている貴族も多い。
だが、あいにく男爵家であるマキウスにはそこまでの余裕は無かった。
「余裕が無くても、本当に好きならばやるものです。ただ、父の様に家庭を蔑ろにしたら、弟とであれ私が許しません」
「それは恐ろしい。姉上の平手打ちほど怖いものはありません」
「全く、お前は……」
そうして、2人は笑い合った。そこには先程までの様な険悪な雰囲気はなく、ただの姉弟がそこにはあったのだった。
「マキウス」
不意にヴィオーラは真面目な顔をして、マキウスに向き直った。
「貴方達、ブーゲンビリア家に戻る気はありませんか?」
「それは、どういう意味ですか?」
マキウスはヴィオーラの真意を確かようとするが、ヴィオーラはそっと微笑んだ。
「本来なら女である私よりも、男である貴方が、ブーゲンビリア家の家督を継ぐのに相応しいのです」
女性が家督を継げるのは、大きく分けて2つの時だけ。
1つは、当主が亡くなり、その妻が継ぐ時。
もう1つは、先代の子供に男子がいない時。
ブーゲンビリア家にはマキウスがいるが、先代のブーゲンビリア家当主であるヴィオーラの母親が亡くなる前に、マキウスはハージェント男爵家の家督を継いでいた。
1人が2つの家督を継ぐ事は出来ないので、ブーゲンビリア家はヴィオーラが継いでいたのだった。
「貴方が家督を継いでくれるのならば、私は気兼ねなく、結婚して家を出る事が出来ます」
「姉上……」
「すぐに答えを出せとは言いません。けれども、考えておいて下さい」
ヴィオーラはそっと目を伏せた。
「いずれの日か、守りたくても『今の貴方』では、守れないモノがあるかもしれませんからね」
「貴方にとっては意に染まぬ結婚。きっと私の事を恨んでいるだろうと思っていましたが……。上手くやれているのならば安心しました」
ヴィオーラはそっと胸を撫で下ろした。
「父のように、モニカさんを娶った後に、本当に好きな女性を娶るのかとも思いましたが……」
「そこまでの余裕が、我が家にあるとお思いで?」
姉弟の父親のように、複数人を養えるならば一夫多妻をしている貴族も多い。
だが、あいにく男爵家であるマキウスにはそこまでの余裕は無かった。
「余裕が無くても、本当に好きならばやるものです。ただ、父の様に家庭を蔑ろにしたら、弟とであれ私が許しません」
「それは恐ろしい。姉上の平手打ちほど怖いものはありません」
「全く、お前は……」
そうして、2人は笑い合った。そこには先程までの様な険悪な雰囲気はなく、ただの姉弟がそこにはあったのだった。
「マキウス」
不意にヴィオーラは真面目な顔をして、マキウスに向き直った。
「貴方達、ブーゲンビリア家に戻る気はありませんか?」
「それは、どういう意味ですか?」
マキウスはヴィオーラの真意を確かようとするが、ヴィオーラはそっと微笑んだ。
「本来なら女である私よりも、男である貴方が、ブーゲンビリア家の家督を継ぐのに相応しいのです」
女性が家督を継げるのは、大きく分けて2つの時だけ。
1つは、当主が亡くなり、その妻が継ぐ時。
もう1つは、先代の子供に男子がいない時。
ブーゲンビリア家にはマキウスがいるが、先代のブーゲンビリア家当主であるヴィオーラの母親が亡くなる前に、マキウスはハージェント男爵家の家督を継いでいた。
1人が2つの家督を継ぐ事は出来ないので、ブーゲンビリア家はヴィオーラが継いでいたのだった。
「貴方が家督を継いでくれるのならば、私は気兼ねなく、結婚して家を出る事が出来ます」
「姉上……」
「すぐに答えを出せとは言いません。けれども、考えておいて下さい」
ヴィオーラはそっと目を伏せた。
「いずれの日か、守りたくても『今の貴方』では、守れないモノがあるかもしれませんからね」