ハージェント家の天使
旦那様
「入りますよ。モニカ」
扉から入ってきたのは、今の御國より歳上の見目麗しい男性であった。
腰近くまである限りなく白色に近い灰色の長い髪を首の後ろで結んでいた。
その頭からは、三角形の形をしてフワフワした黒色の毛で覆われた犬の様な耳を生やしていた。
男性は、御國が上半身を起こしているベッドに近づいてきたのだった。
「騎士団に知らせがきました。モニカが目を覚ましたと聞いて、慌てて戻ってきました」
男性をよく見てみれば、男性は白を基調として青いラインが入った軍服を着ていた。青色のマントが乱れているのは、慌てて来たからだろうか。
「1か月近く眠っていたのです。どこか具合が悪いところはありませんか?」
男性はアメシストの様な綺麗な紫色の瞳で、御國をじっと見つめてきた。
まるで、御國の変化を逃すまいとするかのように。
男性の端整な顔立ちにドキドキしながらも、御國は何とか頷いたのだった。
「はい。大丈夫です。ご心配をおかけして、すみません……」
御國が目線を逸らしながら首を竦めると、男性は手を伸ばしてきたのだった。
「そうですか……。それなら安心しました」
男性は御國の頭に触れようと手を近づけたが、触れる直前、何かを思い出したかの様に手を止めたのだった。
「私は仕事に戻りますが、何かあればすぐに使用人に言って下さい。それでも解決しなければ私を呼んで下さい」
そうして、男性は伸ばしていた手を引っ込めると、御國から離れて行ったのだった。
「あの!」
御國はベッドから離れようとした男性を呼び止めた。
男性は立ち止まると、何故か驚いた様子で御國を振り返ったのだった。
「どうしましたか?」
「えっと……」
男性を呼び止めたのはいいが、御國は何も考えていなかった。
何か言わなければと慌てていると、御國の視界にベビーベッドが入ったのだった。
「せっかく帰宅されたのに、ニコラには会っていかないんですか?」
御國がニコラが寝ているベビーベッドを指差しながら尋ねると、男性は不思議そうな顔をしたのだった。
「……私がニコラに会っていいんですか?」
これには御國が首を傾げたのだった。
「はい……。駄目って事は無いと思いますが……」
(もしかして、何かマズイ事を言ったのかな……?)
御國が内心慌てていると、男性は少し迷った末に「では、モニカの言葉に甘えて」と答えたのだった。
男性はベビーベッドに近づくと、上からそっと覗き込んだ。
「ニコラ」
そうして、ニコラに呼び掛けると、柔らかく微笑んだのだった。
そんな男性の横顔を見ていた御國の胸が、ドキッと大きく高鳴ったのだった。
その時、いつの間にか御國の側から離れて、扉の前に立っていたメイド長が男性に呼びかけたのだった。
「旦那様、愛娘にようやくお会い出来たところ恐縮ではありますが、外で使用人が待っております」
御國がメイド長から扉に視線を向けると、扉の外に何者かの姿が見えたのだった。
「わかりました。すぐに行きます」
男性は名残惜しそうにニコラから離れると、外に出て行ったのだった。
扉から入ってきたのは、今の御國より歳上の見目麗しい男性であった。
腰近くまである限りなく白色に近い灰色の長い髪を首の後ろで結んでいた。
その頭からは、三角形の形をしてフワフワした黒色の毛で覆われた犬の様な耳を生やしていた。
男性は、御國が上半身を起こしているベッドに近づいてきたのだった。
「騎士団に知らせがきました。モニカが目を覚ましたと聞いて、慌てて戻ってきました」
男性をよく見てみれば、男性は白を基調として青いラインが入った軍服を着ていた。青色のマントが乱れているのは、慌てて来たからだろうか。
「1か月近く眠っていたのです。どこか具合が悪いところはありませんか?」
男性はアメシストの様な綺麗な紫色の瞳で、御國をじっと見つめてきた。
まるで、御國の変化を逃すまいとするかのように。
男性の端整な顔立ちにドキドキしながらも、御國は何とか頷いたのだった。
「はい。大丈夫です。ご心配をおかけして、すみません……」
御國が目線を逸らしながら首を竦めると、男性は手を伸ばしてきたのだった。
「そうですか……。それなら安心しました」
男性は御國の頭に触れようと手を近づけたが、触れる直前、何かを思い出したかの様に手を止めたのだった。
「私は仕事に戻りますが、何かあればすぐに使用人に言って下さい。それでも解決しなければ私を呼んで下さい」
そうして、男性は伸ばしていた手を引っ込めると、御國から離れて行ったのだった。
「あの!」
御國はベッドから離れようとした男性を呼び止めた。
男性は立ち止まると、何故か驚いた様子で御國を振り返ったのだった。
「どうしましたか?」
「えっと……」
男性を呼び止めたのはいいが、御國は何も考えていなかった。
何か言わなければと慌てていると、御國の視界にベビーベッドが入ったのだった。
「せっかく帰宅されたのに、ニコラには会っていかないんですか?」
御國がニコラが寝ているベビーベッドを指差しながら尋ねると、男性は不思議そうな顔をしたのだった。
「……私がニコラに会っていいんですか?」
これには御國が首を傾げたのだった。
「はい……。駄目って事は無いと思いますが……」
(もしかして、何かマズイ事を言ったのかな……?)
御國が内心慌てていると、男性は少し迷った末に「では、モニカの言葉に甘えて」と答えたのだった。
男性はベビーベッドに近づくと、上からそっと覗き込んだ。
「ニコラ」
そうして、ニコラに呼び掛けると、柔らかく微笑んだのだった。
そんな男性の横顔を見ていた御國の胸が、ドキッと大きく高鳴ったのだった。
その時、いつの間にか御國の側から離れて、扉の前に立っていたメイド長が男性に呼びかけたのだった。
「旦那様、愛娘にようやくお会い出来たところ恐縮ではありますが、外で使用人が待っております」
御國がメイド長から扉に視線を向けると、扉の外に何者かの姿が見えたのだった。
「わかりました。すぐに行きます」
男性は名残惜しそうにニコラから離れると、外に出て行ったのだった。