ハージェント家の天使
 ヴィオーラとマキウスが話してから、数日が経っていた。
 2人は相変わらず忙しそうだが、ヴィオーラがモニカやニコラに会いに屋敷にやって来る回数も、マキウスが嬉しそうにヴィオーラの話をしてくれる回数も増えた。
 昨日もヴィオーラを交えて、モニカ達は昼食を共にしたのだった。

 昨日の昼間、たまたまこの近くで仕事をしていた姉弟が揃って屋敷に顔を出した。
 丁度、屋敷ではモニカ達がニコラに離乳食を食べさせようと用意をしている時だった。
 そんな現場に、姉弟は遭遇したのだった。
 物珍しいのか、2人は興味津々といった様子で、モニカの手から離乳食を食べていたニコラを見ていったのだった。

 先ずは小指の爪よりも少ない量だけ、この世界には無いかもしれないが、食物アレルギーを起こさなそうな具材を使用した離乳食を毎晩、ニコラは食べている。
 ニコラの様子を見ながら、同じ食べ物を小指の爪より少ないから小指の大きさへと量を増やしていく。
 一口分食べられるようになったら、次の食材をまた小指の爪より少ない量から始める。といった事を繰り返していた。
 万が一を考えて、食物アレルギーを起こしそうな食材については、医師がすぐに駆けつけられるような昼間の時間帯に食べさせるようにしていた。

 屋敷専属の料理人による離乳食だけあって美味しいのか、連日のスプーン慣れの成果が出ているのか、それとも食い意地が張っているだけなのか、ニコラは常に物足りなさそうに食べていた。
 アマンテによると、今はまだ決まった時間に1回だけ与えて、1ヶ月くらいしたら1日2回与えても良いとの事だった。
 そんなニコラの様子が可愛いのか、姉弟は終始にこやかな表情だったのを覚えている。

「モニカ様。今夜のニコラ様の授乳は如何しますか?」
「そうですね……。今日はアマンテさんにお願いしてもいいですか? 確か、マキウス様から、今夜は2人きりで食べたいと言われていたので」

 昨晩、魔法石にマキウスの魔力を補充してもらう際に、「たまには2人でゆっくり晩餐を共にしたいものです」と、拗ねたような態度で言われたのだった。
 きっと、昨日の昼食の席で、モニカがヴィオーラとばかり話していたのが、気に入らなかったのだろう。
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