ハージェント家の天使
夫の優しさ
「モニカ、どうしましたか? 食が進んでいないようですが……?」
その日の夜、約束通りにマキウスと晩餐を過ごしていたモニカだったが、気が乗っていない事がバレてしまったのだろう。
マキウスはしかめ面をしたのだった。
「えっ……!? す、すみません。どうやら、昼間にニコラの離乳食の余りを食べたら、あまりお腹が空いていないみたいで……」
モニカが誤魔化すと、マキウスは「そうなんですか?」と見つめてきたのだった。
「離乳食の余りなら無理して召し上らなくとも、使用人達の間で食べます。ですから……」
そもそも、屋敷の主人の妻が余り物を食べるなどあり得ないだろう。
ーーモニカは美味しそうなので、つい食べてしまうが。
「そ、そうですよね! じゃ、じゃあ、最近コルセットを装着し始めたから、お腹がキツイだけかもしれません」
最近、体調が快調したからと、モニカは今まで着けていなかったコルセットを装着し始めた。
貴族の女性の中でも、特に出産後の女性は身体の骨格が崩れやすいからと、コルセットを装着するのが通例らしい。
ただ、モニカは階段から落ちてずっと寝ていたという事もあって、今まで装着していなかった。
先日、定期的にモニカ親娘を診察してくれていた医師から、「母親はもう大丈夫」とお墨付きをもらった事で、コルセットを装着し始めたのだった。
御國だった頃に噂で聞いていたが、やはりコルセットは腹部が痛くなるくらい、かなりきつく締められた。
これなら、昔の女性がコルセットをきつく締められたせいで気を失ったというのもわかるような気がしたのだった。
「そうでしたか。それだけなら良いのですが……」
まだ疑うマキウスに、モニカは何度も「大丈夫です」と言っては頷いたのだった。
「コルセットも嫌なら無理して着ける必要はありません。現に、姉上は着けていなかった筈です」
「お姉様が?」
マキウスは頷いた。
「ええ。子供の頃からこう言っていましたよ。『コルセットに身体を守られるくらいなら、自分で守った方がマシです』と」
「お姉様らしいですね」
その日の夜、約束通りにマキウスと晩餐を過ごしていたモニカだったが、気が乗っていない事がバレてしまったのだろう。
マキウスはしかめ面をしたのだった。
「えっ……!? す、すみません。どうやら、昼間にニコラの離乳食の余りを食べたら、あまりお腹が空いていないみたいで……」
モニカが誤魔化すと、マキウスは「そうなんですか?」と見つめてきたのだった。
「離乳食の余りなら無理して召し上らなくとも、使用人達の間で食べます。ですから……」
そもそも、屋敷の主人の妻が余り物を食べるなどあり得ないだろう。
ーーモニカは美味しそうなので、つい食べてしまうが。
「そ、そうですよね! じゃ、じゃあ、最近コルセットを装着し始めたから、お腹がキツイだけかもしれません」
最近、体調が快調したからと、モニカは今まで着けていなかったコルセットを装着し始めた。
貴族の女性の中でも、特に出産後の女性は身体の骨格が崩れやすいからと、コルセットを装着するのが通例らしい。
ただ、モニカは階段から落ちてずっと寝ていたという事もあって、今まで装着していなかった。
先日、定期的にモニカ親娘を診察してくれていた医師から、「母親はもう大丈夫」とお墨付きをもらった事で、コルセットを装着し始めたのだった。
御國だった頃に噂で聞いていたが、やはりコルセットは腹部が痛くなるくらい、かなりきつく締められた。
これなら、昔の女性がコルセットをきつく締められたせいで気を失ったというのもわかるような気がしたのだった。
「そうでしたか。それだけなら良いのですが……」
まだ疑うマキウスに、モニカは何度も「大丈夫です」と言っては頷いたのだった。
「コルセットも嫌なら無理して着ける必要はありません。現に、姉上は着けていなかった筈です」
「お姉様が?」
マキウスは頷いた。
「ええ。子供の頃からこう言っていましたよ。『コルセットに身体を守られるくらいなら、自分で守った方がマシです』と」
「お姉様らしいですね」