その呪いは、苦しみだけではなく。
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「俺が死んでも、忘れないで」
私は頷く。当たり前だから。
「俺以外を、一生好きにならないで」
もう一度頷く。
彼のベッドの横にある機械は、彼の命を生き存えさせているのか、カウントダウンを刻んでいるのか分からない。どちらにしても役に立たない機械に、奥歯を強く噛みしめ苛立ったのだけは覚えている。
「俺だけを好きでいて」
それは呪いの言葉だ。
今も私を苦しめている。言葉にしようとすると口を塞がれ、視線を彷徨わせないように目隠しされる。
それは呪いの言葉だ。
甘美で冷たく、唯一私の中に残った言葉。
だから私は、その言葉に縛られながら生きる。それだけが私が彼に出来ることなのだから。
大切な恋人を亡くしたのは、十三歳の時だ。
大人達は可哀想だと同情してくれたけれど、私たちを子どもだと浅はかな判断をしていた。
私たちだって恋で成長し、恋で悩み、恋人の病気で苦しみ、一分一秒も無駄にせず生き抜いていたのに。
『まだあの子のことを忘れられないの? 何年経ったと思っているのよ』
『嘘。冗談でしょ。エッチもしてないガキが忘れられないの?』
『お高くとまって、断る理由がそんな面倒なの止めろよ。俺が悪いみたいじゃん』
馬鹿みたい。
彼は居ないのに、彼の言葉に縛られて、言われなくてもいい中傷、嘲笑を受けて。
それでも私の目は隠され、口は塞がれたままなんだ。
人が死ぬとき、残す言葉は呪いだと思っている。