兄とあたし
 あたしは、小学生になった。
 ランドセルは、義父方の曽祖母が買ってくれた。
 あたしは、身体が、小さい方だったから、まるで、ランドセルが、歩いてるみたいに見えた。
 それでも、あたしは、嬉しかった。
 入学式の日、母だけでなく、義父も来た。
 世間体の為に。
 あたしは、名前を言って、6年のお姉さんに、お花と名札をつけてもらい、一緒に、教室に行った。
 あたしの担当のお姉さんは、2人いて、他にも、数名、お姉さんが2人いる人がいた。
 お姉さん達は、優しく声をかけてくれた。
 「大丈夫?
緊張してる?」
「あたし達に、なんでも言ってね?
トイレ行かなくて、大丈夫?」
 あたしは、「うん。」と、答えるばかり。
 本当は、かなり、緊張していた。
 式が始まり、お姉さん達と手を繋いで、入場した。
 保護者は、割れんばかりの拍手で、迎えてくれた。
 「(これから、小学生なんだ…。)」
 あたしは、ワクワクしていた。
 図書館に案内された時、本の多さにびっくりした。
 あたしは、ここで、1年の目標を立てた。
 それは、「1年間で100冊読むこと。」だった。
 国語が得意なあたしには、とてもいい目標だった。
 その反対に、算数、理科、社会が出来なくて、居残りばかりさせられた。
 練習ノートに、何回も練習したけど、出来なくて、数字の形で、答えを覚えていった。
 あたしの成績は、国語だけ飛び出てて、他の算数、理科、社会は、全滅だった。
 当然、親には、怒られた。
 「理科と社会なんて、覚えるだけでしょ?
なんで、出来ないの?!
算数だって簡単じゃない!!
出来るようになるまで、部屋にいなさい!
こんなの、恥だわ!!」 
 母に命じられて、トイレと、ご飯と、お風呂以外は、部屋に篭(こも)りっきりだった。
それでも、出来なくて、義父から、「頭、おかしいんじゃないか?」と言われた。
 祖母は、1つ上の従姉妹が、頭良かったので、その従姉妹と、比べるばかりだった。
 母達は、勉強の仕方を教えてくれず、頭ごなしに、「勉強しろ!」しか言わなかった。
 義父の「頭、おかしいんじゃないか?」は、口癖になり、言われる度に、あたしの心は、ボロボロになっていった。
でも、「年間で本を100冊読む。」は、達成させた。
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