解けない愛鎖
Ⅰ
お洒落さもムードも全くない、チェーンの居酒屋のテーブル席。騒つく周囲の音に負けないように、女四人でビールグラスをカチンと合わせる。
「かんぱーい。そしてリナ、結婚おめでとう!」
「ありがとう」
正確にはまだ、『結婚が決まった』段階なんだけど。
あたしは忙しい時間を割いて集まってくれた大学時代の友達たちに笑顔を振り撒くと、乾杯を終えたビールをグビグビと一気に飲んだ。
それをテーブルにドンっとおろしながら、あんなに苦いと思っていたビールが美味しく感じられるようになったのはいつからだろう、と思う。
ひさしぶりに集まれば、会っていなかった時間など忘れてしまう。それくらい仲の良い友人達と飲みながらつい感慨に耽っていると、隣に座っていたえっちゃんが横から肘で突っついてきた。
「ねぇ、リナの結婚相手ってどんな人なの?年上なんだよね。写真とかある?」
「写真?あるよ。でも、みんなの期待とは違うかも」
恋人から婚約者となった、三つ年上の彼。割と最近のデートで撮った写真を表示させて、テーブルの真ん中にスマホを置くと、みんなの頭が一斉に集まってきた。
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