解けない愛鎖

付き合っていた頃だって、ヒロキは余程の急用じゃない限り、あたしに何度も電話をかけてきたりはしなかった。

それが、もう一年も関係を絶っていた今になってどうして────。

ふと、電車の中でサエが教えてくれた話を思い出す。

ヒロキは『リナが結婚する前にもう一回会いたい』と、サエの彼氏に話していたらしい。もしかしたらそれで本当に電話を……?

ヒロキと別れてから一年。婚約者の彼と付き合うようになってヒロキへの想いは捨てたはずだったのに、たった二回の着信が、ヒロキへの恋慕の情を掻きたてる。


だって、好きだった。今までで、一番好きな人だった。

愛してるという感情を抱いたのだって、ヒロキが初めてだった。


だから……

スマホを握る左手が震える。それを抑えるように右手を重ねたとき、薬指の指輪が触れた。冷たいその感触に、頭が少し冷静になる。

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