解けない愛鎖

別れてから一度も連絡をしてこなかったのに、今になって二回着信が入ったからなんだっていうのだ。

何度も泣かされて、悲しい想いをさせられたヒロキに惑わされちゃいけない。

あたしには、彼がいる。彼と結婚して、安定した未来を手に入れると決めたのだ。

温かくて、優しくて、幸せで。しあわせだけど────、きっとどこか退屈で。少しだけ物足りない。

あたしが、二番目に好きだと思う、彼との未来。


スマホを両手でぎゅっと握りしめたとき、着信が途切れる。

それからしばらく待ってみたけど、スマホはもう震えなかった。

これでよかったのだ。そう思って安堵する。

でもその気持ちは100パーセント本心とは言いきれなくて。あたしは心の奥底で、ヒロキからの三度目の着信を期待していた。

そして、待ってもスマホが鳴らないことにガッカリもしていた。

やっぱり、ヒロキの言葉なんてアテにならない。会いたいなんて言葉も、口からの出まかせだったのだ。

自分でも表現しようのない感情を含んだため息を吐いて歩きだす。
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