解けない愛鎖
「どうして?」
「ん?」
「どうして、急にかけてきたの?」
この一年間、一度も連絡してきたことなんてなかったのに。
「んー、なんでだろ」
こっちは、電話を取るだけでも死ぬほど迷ったと言うのに。あっけらかんとしたヒロキの返事に、少し苛立つ。
「あのね、ヒロキ。あたし────」
「リナ、結婚するんでしょ?」
苛立ち紛れに、結婚のことを伝えてしまおうと思ったら、ヒロキに遮られた。
「だからかな。リナに会いたくなっちゃった。やっぱり、俺が一番好きだなって思うのは今もリナなんだよね」
少し切なげなヒロキの声に、ドクンと胸が高鳴る。
「リナの家、一年前と同じ?実は俺、今リナんちの近くのコンビニにいるんだ」
「え?」
あたしの家の近くのコンビニなんて、ひとつしかない。たまに婚約者の彼と買い物に行くそのコンビニに、昔はよくヒロキとふたりで手を繋いでお弁当やお菓子を買いに行っていた。
あたしが今立っている場所からそこまで、数メートル。あたしの足は、ほとんど反射的に駆け出していた。