解けない愛鎖
だから、大学を卒業したあとに、あたしとヒロキは少しのあいだ一緒に暮らしてみたのだ。
同棲の話を先に持ちかけてきたのはヒロキで。舞い上がったあたしは、彼との将来を期待した。
だけど誘ってきた当の本人は、あたしとの将来まで深く考えていたわけではない。
あたしがいれば食事の準備や掃除をしてもらえるから、とか。仕事で忙しくなっても同じ家に居れば会いに行く手間が省けるから、とか。家賃の負担もへるから、とか。その程度の軽い気持ちだったらしい。
互いに温度差のある熱量で一緒に暮らし始めたあたし達の歯車は、少しずつうまく噛み合わなくなっていった。
一緒に暮らすからこそ、ふたりでいる時間を大事にしたい。ある程度ルールだってあったほうがいい。
そう思うあたしと違って、ヒロキは常に楽しいことや面白いことが最優先だった。
社会人になって写真の仕事を始めてからは特に、顕著で。興味があることができるとすぐに、あたしをほったらかして飛び出していった。