解けない愛鎖
「リナとは一緒に暮らしてるんだから、いつでもいいじゃん」
そんな考えで、ヒロキのなかのあたしの優先度は極端に低くなった。
家事の負担はほぼ全部あたしで、構ってもらえるのだってヒロキの気まぐれ。
不満を溜めたあたしが文句を言ってケンカになると、ヒロキは「めんどくせー」と言って、楽に一緒にいられるほかの女の子に逃げてしまう。
その度に、もうヒロキとは無理だと思うのに、戻ってきた彼に抱きしめられたらやっぱりヒロキじゃなきゃダメだと思う。
つい一年前まで、あたしたちはずっとそんなことを繰り返してきた。
「リナだって変わってないじゃん。結局こうやって、俺のこと受け入れちゃうところ」
ヒロキが愉しそうにふっと息を漏らす。
それからあたしの目の前でワインの瓶に巻かれた赤いリボンを乱暴に解くと、グラスにワインを注いだ。
「そんなんで、ほかの男と結婚なんてできるの?」
あたしにワイングラスを差し出してきたヒロキが、僅かに目を細めて意地悪く微笑む。