解けない愛鎖
「で、できるに決まってるでしょ!」
ヒロキはまだ、あたしが彼に未練があると思っている。余裕そうなその笑顔に腹が立った。
「あたしは、彼と結婚して幸せになるの。彼はヒロキみたいにすぐに浮気したりしないし、いつもあたしのことを大事にしてくれて優しいし。あたしのことを最優先にしてくれる」
「ふーん。リナの理想の旦那さんじゃん。よかったね。おめでとう」
ヒロキが軽くグラスを掲げて、先にひと口ワインを飲む。
彼の口から漏れた祝いの言葉に、気持ちがこもっているようには思えなかった。
この人は、いったい何がしたいんだろう。
あたしに会いたいと言うのも嘘で、結婚を祝うつもりなんて毛頭なくて。ヒロキのことを諦めて別の人との結婚を決めたあたしのことを、からかって惑わしにでも来たのだろうか。
ひさしぶりに会っても、やっぱりタチが悪い。