解けない愛鎖
「彼女、ほったらかしでいいの?」
鳴らなくなったスマホを気にして床に視線を落とすと、ヒロキがあたしの顳顬に口付けて笑う。
「今はリナが目の前にいるんだから。あいつなんてどうでもいいよ」
「最低」
「結婚するくせに、俺とこんなことしてるリナに言われたくない」
ふふっと緩く笑ったヒロキが、あたしの身体にまたひとつ痕を増やす。
胸元に散らばった独占欲みたいな紅に、最後にもう一度だけ、ヒロキの心を試したくなった。
「じゃぁ、今の彼女と別れてあたしと結婚する?」
あたしの胸元に鼻先を埋めたヒロキが、愛おしそうに、そして切なげにこちらを見つめる。
「リナ、今の彼氏と結婚したあと、俺のこと愛人にする?」
まるであたしを愛しているみたいに見つめるくせに、ヒロキの言葉があたしの期待を残酷に打ち砕く。