路地裏の唄
｢マスター
県さんと玖科君が只今帰還しました｣


｢ただいまラクさん！｣

｢戻りました｣


｢おぅ｣



三人がそう声をかけた先、書類やら資料やらなにやらがうずたかく積まれたデスクの向こうから若い男の声が返ってくる。


｢見て見てラクさん！
すごい子連れて来ちゃった！｣

｢ん？｣


県の言葉に書類の山の向こうから頭が現れる。

長い前髪を正面で分け片方を耳にかけ、上に縁のない眼鏡を掛けた端整な顔立ちの男だった。



｢男か｣



律を見るなり舌打ち混じりに零す。
その反応にうろたえている律をおいて県は｢まずは彼治したげて？｣と緋奈咫の持っているコア・キューブを指し示す。

ゲンラクと呼ばれる男はその宝石に似たキューブを一瞥してすぐ首を横に振る。


｢県の頼みでもダメ。
話が先｣


｢えーっ｣と不満の声をあげる県の後ろから玖科が出て行って机の上にあった記録画像を見るために鏡を持ち出して来る。
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