路地裏の唄
「どうも、妃ノ神 律です。こっちはケータイの原十郎。
あの、二人もラプソディアなんですか?」

「いえ、御主人様が李王(リオウ)サンの知り合いでして」


現樂の本名は李王 現樂なのだそうだ。

気が付けば既にすぐ近くに拳伴の姿はなく、奥の書斎の方から現樂を呼ぶ軽快な声が聞こえてきた。


「うわ、お前……何しに来た」

現樂は拳伴を認めるなりわずかに動じ、露骨に嫌そうな顔をする。

「おーおー今日も元気に血圧低そうだなぁ〜あ、ヒナ元気にしてたかー?
相変わらずかわいいなグハッ!!」
「セクハラはやめろっつってんでしょこのクソ御主人」


あまり周りの事に動じない現樂にしては珍しく、少し椅子から腰を浮かせて距離をとろうとする気配を見せているも、どうやらそれが拳伴に対する彼の日常の反応らしく、県なども気にする様子もなく笑っている。
お茶を持って来た緋奈咫に抱き着こうと両手を広げた拳伴を心水がニコニコ笑ったまま締め上げていた。
首を絞められ声が強制的に抑えられ、声にならない悲鳴をあげている。


「変わった気を見つけたから追ってみたらここに来たんだが、お前らなんか拾った?」

ようやく心水の腕から解放された拳伴がむせながら尋ねる。
現樂は今だ彼に若干の警戒を見せつつも椅子について仕事を再開した。

「ヒナが壊れたツールを拾って来た。
治して深梁が連れてったぞ」


なぁんだ、と拳伴は声を上げて書斎のソファに腰掛ける。
すぐ背もたれ越しに心水が立って控える辺り、主従関係が徹底しているのかいないのかはっきりしない。



「念が遺るようなら話くらい聞いてやろうかと思ったが、まぁお前なら再起させんのは可能か。
で?
元のまま治してやったか?
それとも全くもって初期化したか?」
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