路地裏の唄
「キューブを変えてねぇんだからそのままだろうな。
ツールではなくなったが」


浮いている。
「気」だの「念」だの、巷では聞かない言葉ばかりで、恥ずかしげもなくそういった言葉を使っているあたり、本当に拳伴はオカルト側の人間らしい。


「そりゃ僥倖だ。
治した奴の名前は?」

「苣だよ!
深梁ちゃんが付けたんだ!」

「型はラビット」


元気に答えた県の答えに現樂が補足すると、拳伴は目を丸くした。


「ラビットっつったら遊撃のトップじゃねーの。
なんでまた?」

「出所は不明ですが外部から入った強力なウイルスにいくつかの機能を消去または破壊されていました」


緋奈咫の返答に若い僧侶は深刻そうではないが眉を寄せる。
何か考えている風だったが、結局それについての話は出なかった。




















「……あの男、完全にこちらの味方という雰囲気じゃないみたいじゃのぅ。何者だ?」


拳伴達が去り、深梁から解放された苣を伴って県達が帰宅し、律が就寝した静かな書斎で、原十郎はその長い脚をソファのひじ掛けの上で組み確認する。


「学生ん時からの馴染みだが、昔からあんなんだからな…完全に害を与えて来ないとは言えねぇ」
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