路地裏の唄

垂れ耳兎の到来

「たっだいまーっ」
「只今戻りました」

「お帰りなさい」


「おかえりー…あれ?
買い出しって苣も一緒じゃなかったっけ?」

「途中で深梁ちゃんが連れてったよ〜」



苣が県の元に引き取られてから二週間。
現樂の呼び出しに応じ定期的なメンテナンスを受けながら律の見ている中でも苣はラプソディアのメンバーに馴染みつつあった。


「あんなでか兎に甘い物食べさせて何が面白いのかわかんないけど、深梁さんもよく連れてってくれるよね…」

ただ、親しくなる程に玖科とは喧嘩仲を深めているらしい。
どうも、玖科がいつもどこか眠そうな倦怠感を伴っているのは県いわく省エネモードに設定されているからだそうで、表立つことは少ないがちゃんと心理機能の喜怒哀楽は正常に作動しているらしい。


一方、緋奈咫は元々のコア・キューブが強度重視で心理機能に問題があったために廃棄されようとしたのを現樂が買い取って心理機能も方も修繕したことから、少し発達速度に違いがあるのだそうだ。

その上、心理機能を発達させる為の規範となる持ち主が持ち主なのであまりきょとんとして見える表情が大きく変化することはなく愛想が良いとは言えないが、玖科といる時などは笑顔を見せる事もある。


律も、この場所が心地良いと思えるくらいに馴染んできているのだ。


分子も近頃はあまり大量に発生することもなく、ここ数日は穏やかだった。
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