路地裏の唄
「兄様、なんの目的があるのかは存じませんけれど、いい加減鬼ごっこは終わりに致しましょう」


霞が晴れた先にいたのは少女だった。

ポニーテールにまとまった。苣と同じ白髪赤眼。
身体のラインを隠さない臙脂のラインが入った黒衣。
惜しみなくさらされる白く美しい手足と胸元。

前髪は不対称で向かって左の目は前髪がかかって見えない。


そしてその手にはコンクリートから無理矢理引き抜かれたらしい通行止めの道路標識。



「ロップイヤーラビット…」

「あぁ、俺はコンツとも呼んでいる」

「"兄様"って?」

「型に類似があるからだろう。向こうが勝手に言い始めた」



県と深梁に言葉を返しながら苣はナイフを握り直す。



「まぁ兄様。その様子はこちらに危害を加えようとしていると考えて良いのでしょうか?」

「このまま引き下がってくれるならこっちからは何もしないよ」


黙ったままの苣の代わりに律が口を開く。
コンツの瞳が流れるように律へと移動し、そして見開かれた。


動かなくなった敵の様子に一同が首を傾げる。

彼女は律を見たまま動かない。
これには律もキョトンと首を傾げた。
お互いに初対面のはずなのだ。
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