路地裏の唄
あらかた蹴散らされた分子達は、各々に遁走を始めている。
元々が集団で場に留まるような観念のある存在ではないのだ。


「…様子がおかしい」



苣が低く口を開いたところで、彼女の手から道路標識がガシャンと落ちる音がした。

その瞳は今だ律に向いたままだ。


そのまま地を蹴り、瞬く間に距離を縮めて律の目の前に降り立った。
一同に緊張が流れる中、コンツは律の左手を両手でがしっと掴むと、その頬を紅潮させながら目を輝かせた。





「少年…名はっ?」










その場の誰もが耳を疑った。

































「自発性のリペアか…」


バインダーを見ながら現樂がその傍らに自身のケータイを控えさせ常の彼には珍しくどこか笑いを含んだ様子でそう呟いた。

その向かいには律の腕にその白い腕を絡めたまま離さず座るコンツと、二人を囲むように興味深げに県達が様子を見ている。



「俺とヒナが苣にした措置と同じ現状がどうやら律を見た途端に突如として"異常発生"したらしいな。
早い話が一目惚れだ」



そう言い放つと現樂はバインダーから顔を上げニンマリと二人を見た。


「で?コンツ。お前は何処につく」

「私はいかなる時も律に同意します!」







朗らかに言い放ったコンツに彼はさらに笑みを深くした。
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