路地裏の唄
とは言っても、やはり敵は未知数。
なるべく情報は欲しい。
そんな雰囲気になり始めた頃、緋奈咫が来訪者に気付き玄関に向かった。


迎えた緋奈咫の声の後に聞こえて来たのは女性一人に男性の声が二人。
新顔四人以外はすぐにその三人組が誰かわかったらしく、各々に少なからず反応を見せた。


そして足音は真っ直ぐ書斎に向かう。




「マスター、桧奈(カイナ)さんがいらっしゃいました」

「…これどういう状況?」


緋奈咫の後ろについて中を見ながら眉根を寄せたのはワクチンソフト機関の軍服を元に少々のアレンジを加えた、狙撃手を連想させる服に身を包み長い手袋に覆われた腕を組んでいる女性だった。
肩越しに流れていく藤色の髪は顔の横のみが短い姫カットで、歳は現樂よりは僅か大人びて見える。

「お邪魔します」

さらにその後ろに控えているのはオールバックで一つにまとめられた赤い長髪に黒いアイシールド、足元が隠れる夕焼けのようなグラデーションの入った服を来た知的そうな雰囲気のある穏やかな笑みを浮かべた青年と、

「こんばんわッス!」

赤い青年と同じ背丈で金髪碧眼。ツンツンと立った髪を一部押さえるようにメットを被り、宵闇を思わせる夜色に近い深い青のグラデーションの入った手元が出ない長い袖の服を来た快活そうな青年だった。


「姉さん!どないしたん急に…」

「こいつが来んのはいつだって急だ。だけどま今日は良いタイミングだったな」


声をあげた深梁に現樂が補足すると、たいして気にする風もなく「そりゃよかったわね」と返した。


「へぇ、なんか最近ゴタゴタしてたみたいね」


緋奈咫からの簡単な説明を受けて桧奈はそう口を開いた。
そして横目で自分の妹を一瞥する。


「最近やたらご機嫌だった理由もわかったし」

「あぁぁりっちゃんっ!!姉さんは一応機関の幹部でシャチョーとはその頃からの付き合いなんよ!」


深梁が急に焦ったように律にまくし立て始めた。
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